【完全解説】メンタリングコミュニケーションとは?
投稿日:2019年3月25日 / 最終更新日:2024年9月6日
コーチングの定義
コーチングの概念は世界共通ですが、現在のところ厳密な定義はありません。一般的には、「クライアントに質問を投げかけ、クライアント自身が答えにたどり着き行動するようサポートすること」がコーチングの定義となっています。
コーチはただ質問するだけではなく、クライアントがあらかじめ設定した目標を達成できるように、クライアントの状態を観察しながら適切に話を聞き出し答えに導く能力が必要です。
また、コーチングは1対1で行うことが基本です。マンツーマンで行うことで、クライアントの状況や性格、環境などにフィットしたコーチングをすることができます。
日本のコーチングの歴史
コーチングのはじまり
もともとスポーツの世界で選手を指導することを指していたコーチングという言葉が、ビジネス・マネジメントや育児などの分野に頻繁に登場するようになったのは90年代になってからです。80年代後半、アメリカでは企業で働く一人一人の能力が重視されるようになりました。上司のオーダーに応える社員よりも、自発的に考えて行動するできる人物が求められるようになったのです。そこで人材育成・能力開発の技術としてコーチングの概念が注目を集め、多くの指導者が生まれました。現在では環境や文化に合わせて変化や発展を遂げています。
日本におけるコーチングの歴史
日本でも、90年代後半にはビジネスの世界にコーチングが導入され始めました。上下関係の意識が強く縦割り社会とも呼ばれる日本では、しばしば企業内のコミュニケーション不足が問題視されていました。そして、近年では、「対面でのコミュニケーション機会の減少」や「コミュニケーションスキルの低下」などの理由により、コミュニケーション不足の問題はさらに深刻さを増しています。そこで、管理職にコーチングを学ばせることで部下を育成する意識を持ち、企業全体の成長につなげようとコーチングの教育・研修などを行う企業が多くなっています。ここ10年ほどの間には学校や学習塾、子育てにも取り入れられることが増えています。
コーチングとティーチングの違い
コーチングと近い言葉に、「カウンセリング」、「ティーチング」、「コンサルティング」があります。この4つの言葉はすべてクライアントを導くための手法ですが、クライアントとの接し方、話し方などにそれぞれ違いがあります。
相手から答えを引き出す:コーチング、カウンセリング
クライアント自身に答えを見つけてもらう手法がコーチングとカウンセリングです。
コーチングは質問によって、クライアント自身も気が付いていない答えを引き出していきます。コーチはクライアントに自発的に考えてもらうことを通して、目標達成や問題解決の力をつけることをサポートする役割となります。
コーチングは積極的にアドバイス(答えの提供)をせず、サポートすることを重要視するという点ではカウンセリングと似ていますが、カウンセリングは広く「相談」という意味で使われることが多い言葉です。また、能力開発を目的とするコーチングに対して、心理療法の一つとしてのカウンセリングは心身症の改善、回復が目的となります。一般的には、人を一歩前に押し出す・キャリアアップさせるのがコーチング、通常よりも不調な人を本来の状態に戻すのがカウンセリングととらえるとわかりやすいでしょう。
答えを提供する:ティーチング、コンサルティング
ティーチングは言葉のとおり相手に「教える」こと。学校での授業のように、指導者が答えを与える手法です。
コンサルティングはクライアントの目的に対し、解決策としての明確な答えを与えます。ティーチングとは対照的に、クライアントのオーダーを叶える意味で答えを提供するのがコンサルティングです。
すべてのスキルを使う:メンタリング
上記4つの手法をすべて使用するのがメンタリングです。実際にはすべてを細かく使い分けるというよりも、自身の経験や知識をもとにビジネス以外の人生や生活の相談も受け、長期的にコーチ、カウンセラー、コンサルタントの役割を果たしていく人をメンター(メンタリングを行う人)と呼ぶことが多くなっています。そのためメンタリングにおいては、単なるテクニックだけでなく、コーチングやティーチング以上に、メンタリングを行う人の経験値が問われることになります。
コーチングはどんなテーマに対応するの?
コーチングを使用すると良いテーマや場面をさらに具体的に見ていきましょう。
相手から答えを引き出す:コーチング、カウンセリング
もともとコーチングが生まれたスポーツのシーンでは、大会での優勝や選手としてのスキルアップを目的として、選手を育成する人をコーチと呼びます。コーチは選手の代わりに競技を行うことはできませんので、選手が目標を達成するために外部から働きかけます。選手がパフォーマンスを発揮するには、練習方法やメンタルの持ち方において選手自身が発見した、気が付いたというプロセスを踏むことが重要です。
「自分で習得した経験」を得ることで、自発的に考え、物事に自信を持って前向きに立ち向かう力をつけられることこそがコーチングの優れた点と言えるでしょう。コーチングは半年~1年程度の期間をかけて取り組み、相談者の力と相談者自身を育てます。ビジネス以外にも子育てや学校、学習塾、リハビリテーションの現場などでも有効です。
カウンセリングの基本は積極的な姿勢で相手の話を聞く「傾聴」です。相談者の心身に不調があるときや、ナーバスになりやすい場面で特に有効と考えられます。具体的なテーマでは、就職・転職活動、家庭内不和・離婚、病気や怪我に伴う心の不調など、悩みを抱えている人をサポートする場面で使用すると相性が良いでしょう。
答えを提供する:ティーチング、コンサルティング
ティーチングは一般的な講義や研修でイメージされるとおり、知識を得ることが目的の勉強や資格取得の際には有効な方法です。
コンサルティング・コンサルタントという言葉をよく聞くのは「経営」の場面ではないでしょうか。経営コンサルタントは企業の経営状態を良好に導くため、調査をもとに体質の改善・資金計画・マネジメントなどを行う仕事です。
メンタリング:すべてのスキルを使いこなせる
上記4つの手法のすべてのスキルを使いこなせるのがメンタリストですので、活躍の場も大幅に広がります。複雑な問題解決や長期間に渡るクライアントサポートなどにも対応可能です。ただし、メンタリストは職業としてまだまだ一般的とは言えませんので、集客やクライアントからの信頼感獲得のためにコンサルタントやカウンセラーといった肩書で仕事をし、メンタリストのスキルを使用する人も多いようです。
コーチングのメリット
潜在能力や可能性を引き出す
誰にでも潜在能力はあると言われていますが、何もしなければ一生表に出てくることはありません。コーチはクライアントとの関係を構築し、コミュニケーションをとる中でクライアントに良い変化をもたらせる方向に導いていきます。クライアントは行動し、変化する自分自身と向き合うことで、自分の中にあらかじめ備わっている力や意外な可能性を得ることができます。
自分でも気づいていなかった問題に気づく
コーチングでは対話や問いかけをとおして置かれた環境や状況を説明することで、自分でも気づいていなかった問題に気づくことができます。人はなんとなく考え始め、答えにたどり着かないまま考えることをやめてしまうものです。さらに、ポジティブな事柄よりネガティブな「問題点」には目を向けにくいのではないでしょうか。日時を決めてコーチングの時間を設け、プロのコーチと対話することで今まで見えなかった問題点を自然に見つめ直すことができるでしょう。
自発的な行動ができるようになる
コーチングは「答えはすべて相手の中にある」という考え方がベースとなっています。コーチはクライアントの中にある答えをクライアント自身が見つけられるように、励ましたりや目標を具体的にしたりしてモチベーションを上げるサポーターです。自発的に行動する習慣が身に付けば、目標を達成しやすくなります。さらに目標を達成する経験を重ねることで自信が積みあがっていき、根本的なプラス思考を作り上げられるでしょう。
自分を認めてあげることができるようになる
コーチングと自己承認、自己肯定は密接な関係にあります。自己承認、自己肯定は目標達成のためには欠かせません。人間は自分自身に厳しく接しすぎてしまうと目標を達成しにくくなってしまうのです。
心理学の第一人者であるマズローが提唱した欲求5段階欲求説を聞いたことがあるでしょうか。マズローは人間には1.生理的欲求、2.安全欲求、3.社会的欲求、4.尊厳欲求、5.自己実現欲求の5つの欲求があり、レベルの低い欲求が満たされて初めて一段階上の欲求が生まれるとしています。 この説をもとに考えると、自分に自信がない状態とは4の尊厳欲求、もしくは3の社会的欲求が満たされていないことになります。
コーチングでは5の自己実現欲求を持っている状態にまで意識を高めることが第一歩です。問いかけと受容を繰り返す対話の中で自信を持てない理由となった出来事や思考を掘り下げ、視点を変えて見ることで「プラスの出来事」、「自分を作るうえで大切な出来事」としてとらえられるマインド(思考習慣)を作っていきます。自分の経験をポジティブにとらえるマインドが身に付けばそれは一生もの。自分を認めてあげることができるようになります。
問題への対応力が身に付く
コーチングは対話による思考整理術とも言えます。コーチは適切な質問やクライアントの話したことをまとめ、本心から望んでいることを 適切な問いかけにより「気づき」へと導きます。そして、目標達成までのプロセスを具体的にする「次に何をすべきか」、「どうしたらできるのか」といった質問をしていきます。
目標達成と問題解決は根本的には同じですから、この思考力を手にすれば身近で問題が起きたときにも対応できる範囲が広がるでしょう。
目標の達成力が向上する
取り組むうちに目標がノルマにすり替わってしまったことがありませんか。「自分で目標を設定して動き始め、達成する」という1つのサイクルをたった1人で行える人は案外少ないものです。目標のハードルが高ければ高いほど、自ら達成までに必要な行動やプロセスを管理する自己統制力が求められます。コーチングでは、クライアントが達成したときのビジョンを明確に持ちつつ、わくわくしながら目標に向かえるようポジティブなイメージを引き出していきます。これによって、1人では困難な高い目標も楽しみながら乗り越えることが可能になるのです。
コーチングのデメリット
コーチングは明確なゴールに向かうためのアプローチとして有効ですが、万能ではありません。
コーチングのデメリットには以下の4つがあげられます。
自主性が効果の有無に影響する
コーチングはあくまでも目標達成や問題解決をサポートする技術です。スポーツのコーチと同様、コーチは相談者の代わりに目標を叶えることはできませんから、コーチングの効果を十分に発揮するには相談者自身が自主性をもって取り組むことが大切です。
コーチとの相性が要
コーチングは相談者とコーチの相性によっても効果が異なります。効率的に目標を達成するには、クライアントが正直な気持ちを吐き出せる関係性を作る必要があります。 コーチが意見を押し付ける、合意がないままに目標を設定することは正しいコーチングとは言えません。
社内で上司が部下の育成方法として短時間のコーチング研修を受けて行う場合などにこういった問題が起こりがちです。
コーチのスキルによって効果が異なる
コーチがクライアントに必要とされ続けるためには、時代にフィットしたコーチングの継続学習が求められます。コーチが未熟な場合やスキルが充分でない場合、適切なコーチングが行えず充分な効果が得られないことがあります。
効果が表れるまでに時間がかかる
コーチングの効果が出てくるまでの期間は問題の種類や相談者の気質によって違いがあります。相談者自身が変わることですぐに解決できる問題なら3ヵ月程度、相談者の変化によって周囲に効果をもたらす必要がある場合には半年~数年単位でプラニングします。
即時の問題解決には向かない
コーチング相談者の力を伸ばすことに重きを置くため、早急に問題を解決する手法ではありません。スピーディな問題解決・改善にはティーチングやコンサルティングが適しています。
コーチングで「伸びる人」とは?
コーチングが向いている人の特徴
コーチングが向いているのは「今の自分や環境を変えたい」、「より良い状態にしたい」と思っている人。つまり変化を望んでいる人です。たとえば、「ダイエットに何回も失敗しているけど、今度こそは痩せたい」と考えている場合、失敗続きだったことから目標の達成は難しいと考えるでしょう。しかし、コーチングでは「今から変わりたいか、変わるならどんな風になりたいのか」が大切であり、変化を望む気持ちがある限りより良い方向への進み方を探し、導いていきます。
また、新たな目標を立てる際にどんな目標を設定したらいいのかわからない場合にも、クライアントの資質や現状から適切な目標を設定できるようにアシストします。
コーチングに向かない人の特徴
反対に、コーチングは変化を起こしたくない人には向いていません。本人が「変わりたくない」という気持ちで満たされていれば、どんなに優れたコーチでも成果を出すことはできないでしょう。
「伸びること」、「成長すること」は、今の自分や現状を変えることです。コーチは変化にともなうストレスを受け止めることはできても、変化すること自体を望まない場合には手立てがなくなってしまいます。
コーチングが役に立つ場面
目標を見つける
「プロジェクトを成功させる」、「リーダーシップを取れるようになる」、「子どもとの関わり方に自信を持てるようになる」など、自分にとって最もマッチする目標を見つけるには自分を深く掘り下げ、向き合うことが必要です。しかし、たった一人で行うのはエネルギーを使いますし、自己対話を行う中でネガティブな方向に流されてしまうこともあるでしょう。信頼できるコーチのサポートがあれば、自己対話が苦手な人でも対話の中で自然と目標を見つけやすくなります。
自己管理ができるようになる
コーチングは目標までの道のりを明確にし、必要な行動や習慣、プロセスを逆算する思考が重要です。そのため、コーチングを受けたり学んだりすることで目標達成までの逆算思考がクセ付き、自己管理能力を高めることにつなげられるでしょう。
自主性が高まる
前述したとおり、コーチングはティーチングやコンサルティングと異なり「答えを提供しない」手法です。クライアント自身が答えを導き出す、あるいは自分の中にある答えを見つける、気づくために、観察・対話・質問、ときにヒントを提示して成長をうながします。コーチはクライアントに答えを得るまでの道のりを自分で歩いてもらうことで自主性を高め、自分の頭で考えて行動できる人物を育てます。
親子関係が改善できる
親子の関係が上司と部下のように、常に親から子どもへと指示を与える関係になっているという家庭は少なくないかもしれません。自分より圧倒的に未熟な子どもに対しては、一方的に教える・与えるスタイルとなりやすいからです。しかし子どもの自主性を高め、人生を自分の手で切り開いていく力をつけて欲しいと望んでいる親もまた多いでしょう。親がコーチングを学ぶことで、後方から支援する関係性を構築するマインドを身につけることができます。
理想の親子関係は家庭によって様々ですが、一方的な指示を与える関係より子どもから積極的にコミュニケーションをとれる関係を望む親が増えています。また、自主性や自立心が身に付くコーチングを子どもとの関わり方に取り入れることで、将来的に家庭での学びを社会で活かせる機会が多くなるでしょう。
円滑なコミュニケーションができる
コーチングでメインとなるのはクライアントとの対話です。プロのコーチたちはクライアントの意見を引き出せる質問を用意してコミュニケーションを図ります。そのためクライアントは積極的に発言する習慣がつき、様々なコミュニケーションの場面で主体性をもって発言できるようになります。
緊張する場面でも能力を発揮できる
コーチングでは「エフィカシー(自己効力感)」を重要視します。エフィカシーとは、「やるべき場面が訪れたときに、自分は理想的に行動できる」という気持ちのことです。「100回練習したから大丈夫」といったように練習や能力を根拠に自信を持つこととは少し違います。エフィカシーが高い状態とは、目標を達成できる自分であることを疑わず、成功すべくして成功すると考えられる状態のこと。
緊張する場面でのパフォーマンス低下は、その場で現実に起こっていることよりも、現実を受けて思考がネガティブになり、失敗するイメージが湧くことで起こりやすくなります。コーチングでエフィカシーを向上させることで、緊張下でもパフォーマンスを充分に発揮できることにつながります。
『プロコーチ』を目指すなら
プロのコーチとして人の能力を引き出す側となるには、どんな方法があるのでしょうか。プロコーチの定義からなり方まで順に紹介します。
プロコーチとは?
在日本ではコーチングを行うために資格が必要なわけではありません。そのため、誰でもプロコーチを名乗ることができますが、有償でコーチングを行うには経験やスキルを開示できなければクライアントからの信頼を得られないでしょう。
プロコーチになるには?
プロコーチと名乗っても申し分のない実力をつけるには、実際にプロコーチとして活動する人が教えている、多くのコーチを輩出しているコーチング団体・スクールで学ぶ方法が効率的です。メソッドやカリキュラム、費用などは団体ごとに異なるため、それぞれの特徴を知って自分に合った団体で学びましょう。
プロコーチが活躍できる場面
プロコーチは企業の人材育成、スポーツの場でのコーチング、集客コーチング、医療機関でのメディカルコーチング、市民団体や個人向けのライフコーチングなど、様々な場面で需要があります。経済や文化の発展にともない、人々は物を得ることに力を注ぐよりも自己実現と成長を求めるようになっています。コーチングは未来に向けて益々需要が高まると考えられるでしょう。