【解説】心理学とは?|基本から応用まで、そして、日常で活用するコツ
投稿日:2024年9月2日 / 最終更新日:2024年9月5日
「心理学」は、私たちの生活にどのような影響を与えるのでしょうか。
私は2003年から、日常で使える心理学を皆さんにお伝えする仕事をしてきました。
長年の経験で感じたことや、急速に発展するデジタル時代における心理学のテーマをお伝えします。
日常で使える心理学とは?
心理学は、人間の行動、思考、感情を科学的に研究する学問です。
その重要性は、個人から社会全体に至るまで広範囲にわたります。
人間関係の改善
人間関係がこじれる大きな理由は、自分や相手の気持ちが目に見えないから、とも言われています。
心理学の知識は、見えづらい自他の気持ちを可視化し、人間関係を改善するために役立ちます。
後述する、コンフリクトマネジメントの分野でも注目されています。
心理学は、人間関係における様々な知識や技法を提供することで、プライベート、家庭、職場、地域など、さまざまな人間関係の課題を解決し、コミュニティの生産性を健全にします。
コンフリクトマネジメント
心理学は、組織内での対立をポジティブにとらえ問題解決を図る「コンフリクトマネジメント」の分野でも、注目されています。
あなたの相違を示せ、私の相違を歓迎せよ、 メアリー・パーカー・フォレット(1868年9月3日~1933年12月18日) |
対立こそ、新しい可能性への道。
コンフリクトマネジメントは、心理学の知見を活用して対立や紛争を建設的に解決するための重要な技法です。
・アサーティブコミュニケーション
・協働的アプローチ
・メディエーション
・ネゴシエーション
などの技法を学ぶことで、健全な対人関係を維持し、問題を効果的に解決する可能性を探ります。
一人ひとりのパーソナリティの理解は、新しい可能性をひらく重要な要素です。
心理学は、これらの技法を提供することで、個人と社会全体の調和を促進します。
教育と学習の向上
教育心理学の分野では、学習者の理解と教育方法の最適化に貢献しています。
学習スタイルや人間らしい目標に向かう前向きなモチベーションの研究は、効果的な教育プログラムの設計に役立っています。
仕事のパフォーマンス向上
産業・組織心理学は、職場の効率と従業員の満足度を高めるための方法を提供します。
リーダーシップ、チームビルディング、ストレス管理などの分野での研究が、より健康的で生産的で満足度の高い職場環境を作り出すのです。
メンタルヘルスへの影響
厚生労働省によると、メンタルヘルスとは体の健康ではなく、心の健康状態を意味します。
体が軽いとか、力が沸いてくるといった感覚と同じように、『心が軽い』『穏やかな気持ち』『やる気が沸いてくるような気持ち』のときは、心が健康といえるのです。
心理学は、うつ病や不安障害などの精神的な問題の理解と治療に大きく貢献しています。
私自身、29歳の頃、うつ病と診断され3年くらいつらい時期がありました。
あれから30数年。あの頃、今の心理学の知識があれば、もう少し早く健康になれたかもしれません。
社会問題の解決
社会心理学は、偏見、差別、犯罪行動などの社会問題を理解し、解決策を提供します。
行動科学の研究は、公共政策やプログラムの設計に影響を与え、社会全体の福祉を向上させます。
心理学が注目される理由
心理学は昔から注目されています。
なぜならば、私たちは関係性の中で生活をしているからです。
その関係性にかかわる特に重要な要因です。
心の健康の意識の向上
現代社会では、メンタルヘルスの重要性が広く認識されるようになりました。
心理学の研究は、精神疾患の理解と治療に不可欠であり、多くの人々が心理学に関心を持つ理由の一つです。
ストレスとライフバランスの問題
人生100年時代。AI時代。
急速な技術の進歩と競争が避けられない社会の中で、私たちはストレスやワークライフバランスの問題に直面しています。
心理学は、ストレス管理やウェルビーイングの向上に役立つ方法を提供しています。
行動科学の発展
行動経済学やニューロマーケティング(脳科学を活用して消費者の心理や行動原理を分析し、マーケティング活動に応用する手法)など、心理学の知見を応用した新しい学問分野が注目を集めています。
これらの分野は、消費者行動や意思決定の理解に役立ちます。
教育への関心
教育において、心理学は子どもの発達や学習に関する重要なエビデンスを提供します。
親や教育者が心理学の知識を活用することで、より良い教育環境を提供することができます。
社会的および文化的変化
グローバル化やデジタル化に伴う社会的および文化的変化は、人々の行動やコミュニケーションに影響を与えます。
心理学はこれらの変化を理解し、適応するための手助けをします。
心理学は、私たちの生活のあらゆる側面に影響を与え、その知識を応用することで、個人や社会全体がより健康で調和の取れた生活を送ることができます。
そのため、心理学はますます重要性を増しているのです。
注目のデジタル時代の心理学
デジタル時代の心理学の主要テーマ
AI、デジタル技術の急速な進展に伴い、心理学の研究と応用にも大きな変化が生じています。
デジタル時代の心理学では、デジタル技術の影響と、それに関連する課題に焦点を当てていきます。
デジタル時代の心理学の主要テーマは以下の通りです。
- デジタルウェルビーイング(Digital Well-being)
デジタルデバイスの過剰使用が心身に与える影響と、それを管理する方法。
デジタル機器の使い方を見直し、生活や健康に気を付ける力にも注目します。 - サイバー心理学(Cyberpsychology)
インターネットやソーシャルメディアの使用が人間の行動や認知に与える影響。 - オンライン教育とEラーニング(Online Education and E-learning)
デジタルプラットフォームを通じた教育の効果と課題。 - デジタルヘルス(Digital Health)
テレメディシンやデジタル健康管理アプリケーションの使用が健康行動に与える影響。 - バーチャルリアリティ(VR)と拡張現実(AR)
治療やトレーニングにおけるVRやARの応用と効果。
デジタル時代の心理学への期待
国内では、メンタルヘルスが社会問題になっています。
デジタル時代の心理学への期待の一つが、メンタルヘルスの向上です。
その手法として、オンラインカウンセリングやメンタルヘルスアプリの普及が注目されています。
しかし、心理的支援へのエビデンスが乏しいのが現状です。
デジタル技術は、個別化された学習体験を提供し、教育の質を向上させるかもしれません。
ただし、こちらも十分なエビデンスがあるとはいえません。
また、新たな研究の可能性として、大規模データ(ビッグデータ)や機械学習を用いた研究は、
新しい知見と革新的なアプローチを提供する可能性があります。
そして、社会的つながりの維持として、ソーシャルメディアやオンラインコミュニティは、地理的制約を超えた人々のつながりを支援するでしょう。
まとめ
心理学は、人間関係とコミュニケーションの理解と改善に不可欠な分野です。
- 言語的なコミュニケーションを超えた非言語コミュニケーション
- 考え方の違いへの理解
- 感情のコントロール など
心理学は、円滑なコミュニケーションと良好な対人関係を築くための強力なツールを提供します。
コンフリクトマネジメントの分野で注目されているように、人間関係の対立をポジティブに捉えることで全体の利益や成長を促すための技法を心理学から取り入れることも可能です。
デジタル時代の心理学では、デジタルウェルビーイングによるデジタルデバイスとの共生を目指しながら、ソーシャルメディアやオンラインコミュニティによる人々のつながりを維持する機能を活かした、新たなアプローチの可能性を秘めています。
こうした心理学を日常生活に取り入れ活用していくことで、円滑なコミュニケーションによる人間関係の改善や、家庭や会社など、組織全体の成長が期待できるでしょう。