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【解説】もう悩まない! 心の法則

【解説】もう悩まない! 心の法則

投稿日:2023年3月31日 / 最終更新日:2024年9月5日

内面の問題解消には役立たない! 心が得意な2つのこと

最初に述べた悩みについて、もう一度考えてみましょう。

「意志が弱いから、ダイエットが上手くいかない」

「やる気が出なくて、仕事がまったく進んでいない」

「いつまでも落ち込んでいる私は、メンタルが弱い」

このようなとき、「心が問題を引き起こしているから、心を入れ替えれば、問題は解決する」と
考えてしまいがちです。

それでは、なぜ、そのように考えてしまうのでしょうか?

それは、私たちの悩みの多くは、心(感情や思考)が得意なことに多大な影響を受けているからです。

人の心が得意なことは、大きく分けると以下の2つです。

①終わった過去に対して問題の原因探し

②まだ来ない未来への心配や不安

この2つは、「内面の問題解消」にはあまり役に立ちません。

終わった過去に対して問題の原因探し

何か問題が起こると、私たちは内省し、過去を振り返り、自分の中の【内なるコーチ】に助けを求めようとします。

ところがときに、それに代わって【内なる批判者】に出くわすことがあります。

「なぜ」「どうして」を考えて原因を探ると、「犯人探し」が始まってしまいます。
自己を批判したり、他人を批判したりと、個人攻撃の罠にはまってしまいます。
これでは、誰も幸せになりません。

特に、「自分の心に問題があったのでは…」となってしまうと、単に自分を責めるだけのパターンに陥ります。
解決しようという努力が、問題を作り出していると言ってもいいでしょう。

まだ来ない未来への心配や不安

私たちの記憶は、「できたこと」よりも「できなかったこと」の方が強く記憶されます。
私たちの脳は、生存本能を優先するため、安全・安心であることを求めます。
そのため、不安や恐れなどを強く記憶し、避けるようにと働くのです。

しかし、不安や恐れなどを強く記憶することで、思考がそれを維持し、想像し、増幅していていきます。

「昨日も叱られたし、上司に嫌われたかもしれない」

「緊張して、上手くプレゼンできなかったらどうしよう」

このように、まだ起きてもいない未来に対して、勝手な憶測をしてしまいます。

不安を感じることでより不安が増し、緊張することでより緊張してしまう。

「自分はダメかも」という考えを、「考えないようにしよう」「前向きにならなきゃ」というように
頑張れば頑張るほどしんどくなってしまう。
悪循環そのものです。

「なぜ…」「どうして…」苦悩を繰り返してしまう理由

人は他の動物とは違い、悩むことができます。

特に「怒り」「不安」「怖れ」「心配」は、心に強く残ります。
強い感情(特に恐怖や怒り)が伴う経験は、より受容的な記憶になりやすいと考えられています。
これは、感情は脳の記憶システムに強い影響を与えるためです。

動物にも嫌なことはありますが、それは今ここにある「苦痛」に反応するだけです。

しかし人間は、頭の中にしゃべり声のようなものを持っています。
その声がもたらす、循環するネガティブな思考と感情によって
目の前に苦痛がなくても悩むことができてしまいます。
これを「苦悩」と言います。

苦痛とは、今ここに刺激があって不快なこと。

苦悩とは、今ここに刺激がないのに不快であること。

苦悩とは、あなたの思い込みによって頭の中に作られた「仮想の現実」を、
目の前の現実より優先してしまっている状態なのです。

また困ったことに、心は「過去」と「未来」の現実を区別することができません。
心は「空想」と「現実」の区別ができないのです。

過ぎ去った過去でも、未来の想像の中の話であっても、そのときの状況を想像することで
感情だけはリアルに感じることができてしまいます。
そして、何度も嫌な感情を繰り返します。

人間の心理として、繰り返される経験は、より記憶となりやすいと考えられています。
このように、ネガティブな思考の影響で、苦悩を繰り返してしまうケースがあまりにも多いのです。

心をコントロールするのは難しい

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)という
第三世代認知行動療法を代表する心理療法があります。

ACTでは、心は感情を調節するための機能を持っていますが
常に感情をコントロールすることは難しいとされています。

思考や感情はコントロールできる?

不安や恐れ、怒りや心配などの感情は、自身で抑制できると考えられがちですが、
実際には抑制が困難である場合があります。

ぜひ、このようなエクササイズをしてみてください。

「みかん」のことを考えないでください。
どんな色なのか、どんな味なのか、どんな場所で目にするのか、思い浮かべないでください。

どうでしょう?

「みかん」と聞くと、頭の中に「みかん」を自然と思い浮かべます。

みかんの重さ、皮を剥くときの感覚、味など、みかんに紐づいた記憶や感情も思い浮かべることもあるでしょう。

思考や感情をコントロールする力はごく弱く、簡単には、自分が望むようにはできないのです。

「怒り」「不安」「怖れ」「心配」などの不快な感情を追い払うための心理的手法は数多く存在します。

それによって、「怒り」「不安」「怖れ」「心配」が消えることもあるでしょう。

しかし、その不快な感情は、そのときは消え去ったとしても、しばらくすると戻ってきてしまいます。
再び追い出す、また現れる、この繰り返しです。

そもそも、なぜ私たちは、自分の思考や感情をコントロールしようとするのでしょうか?

なぜなら、私たちは子どもの頃から、「怒り」「不安」「怖れ」「心配」などの感情は悪いもので、
「感情をコントロールできることが良いこと」だと、学習してしまっているからです。

「泣き虫だな」

「こんなのが怖いの?」

「いつまで文句を言ってるんだ」

このような大人たちの言葉の裏には、
「人間は感情コントロールできなければならない」というメッセージが潜んでいます。

「感情は、コントロールできなければいけないもの」

「大人になれば、感情をコントロールできるようになるのだろう」

このように子どもは無意識に思い込んでしまいます。

そして大人になるにつれて、思考や感情のコントロールに失敗すると、
「コントロールできない自分はダメだ」という思いが強められてしまうのです。

大人も心の問題をコントロールできていない

3,000人を対象に、心の問題(「怒り」「不安」「怖れ」「心配」)を解消した方法を尋ねたところ
以下のような結果が出たそうです。

第1位:寝る

第2位:飲む・食べる

第3位:忘れる・考えるのをやめる

「怒り」「不安」「怖れ」「心配」の心の問題があるとき、私たちが行ってしまう典型的な2つの対応があります。

・感情に身を任せる

「怒り」「不安」などを言葉にし、ときには誰かにそれをぶつけて発散し、解消します。
発散させたことで、高ぶった感情は鎮まってくれるかもしれません。

しかし、感情に支配されてしまったことで、「あれはよくなかった」と後から後悔に変わります。
その結果、「感情をコントロールしなければ…」という心理が、更に強くなってしまいます。

・感情を回避しようとする

先程のアンケート結果の3つの解消方法は、「感情を回避する」ための行動です。

1位:寝る → 注意を逸らす

感情から目を背けるために、私たちは、本を読んだり、動画を見たり、運動したり
仕事に没頭してみたりと、様々なことをします。

中でも、寝ることは効果的です。
その不快な感情をすぐに手放すことができます。

2位:飲む・食べる → 嗜好品を利用する

食べたり、飲んだりすることによって、あなたの身体は反応します。
血糖値が上がり、インスリンが分泌されて、幸せホルモンのオキシトシンが分泌されます。
嗜好品のチカラを借りて、良い感情を持った状態へと替えるのです。

3位:忘れる・考えるのをやめる → 不快な感情を呼び起こさないように手を引く

忘れる、考えるのをやめるためには、それができる環境に身を置く必要があります。
状況や人から距離を取ったり、着手するのを遅らせたりと、その場から一時的に、もしくは永遠に逃亡します。

また、1位の「寝る」には、この「忘れる」という効果もあります。
脳は睡眠中に、その日に受け取った情報の整理をし、必要な情報は記憶として定着させ
あやふやな情報は捨てて、忘れさせていきます。
徐々に忘れていくことで、気持ちは軽くなります。

大人は子どもの前で、このような姿をわざわざ見せようとしていないだけで
感情をコントロールしているわけではないのです。

「怒り」「不安」「怖れ」「心配」…あなたはどうする?

先ほどお伝えした「寝る」「飲む・食べる」「忘れる・考えるのをやめる」という行為は
誰しも思い当たるところがあるのではないでしょうか?

これらの行為は、あなたの気持ちを軽くするために、あなたの心を守るために
当時のあなたにとっては意味のあることだったと思います。

ただ、気づいているでしょうか?
これらは、あくまで、不快な感情を回避しただけであって、問題の解消には至っていないのです。

逃れられない嫌なことを一時的に先送りにして、実は問題を大きくしてしまった
食べて発散することで太ってしまったなど
不快な感情を避けることで、自分にとって価値ある行動を妨げてしまうこともあり得ます。

苦痛は仕方ないけれど、苦悩は避けよう

期待と現実のギャップが大きく、思い通りの結果が得られなかったときに
私たちは心の痛み、「苦痛」を感じます。

でも、人生から嫌なことがなくなることはありません。
嫌なことにぶつかったとき、どんな捉え方をするか、どんな反応をするかによって
「悩み」が生まれるかどうかが変わります。

大切なのは、一時的な「苦痛」を避けようとして、永続的な「苦悩」に変えないこと。
人生に必ず存在する「苦痛」と、どのように付き合うかということです。

豊かな人生を送るための「心の法則」

では、苦痛を苦悩に変えずに、上手に付き合っていくためには どうすればよいのでしょう?

そもそも、「怒り」「不安」「怖れ」「心配」とは?

私たちの人生には、「怒り」「不安」「怖れ」「心配」という心の問題はつきものです。
思い通りの結果が得られなかったときに、私たちは心の痛み、苦痛を感じます。

でも、それは心の弱さではありません。
正常な人間の反応です。

なぜなら、人は誰しも、自分のコンフォートゾーンから出ようとするとき、
「怒り」「不安」「怖れ」「心配」を感じるからです。

新しい挑戦をする、経験を積む、困難と向き合う、人から気づきを得る。

成長するための新たな壁にぶつかったとき
「怒り」「不安」「怖れ」「心配」は、自然に起こるものです。

「怒り」「不安」「怖れ」「心配」があることが問題なのではなく、
それらに対する私たちの反応が問題なのです。

心は内面の問題解消が苦手

「心は内面の問題解消が苦手である」
この【心の法則】を知っているだけでも、大きな効果があります。

心は、「問題の解消」ではなく、
過去に対して「問題の原因探し」や、未来への「心配や不安」をさせる方が得意です。
にもかかわらず、問題解決のために心にフォーカスしても
自分のメンタルを弱めるだけで、望む結果にはつながりません。

繰り返しになりますが、「怒り」「不安」「怖れ」「心配」という
心の内面の問題はコントロールが難しく、それらを自分が望むようにはできません。
にもかかわらず、苦痛を感じた心をコントロールしようとするため、苦悩が生まれます。
まずは、心をコントロールすることを手放してみてください。

怒っている自分、不安な自分、恐れている自分、緊張している自分…。
そんな自分を「今、私は不安なのだな」「今、怖がっているのだな」と、
ただ、第三者として心の動きを眺める。

それは、自分と深く向き合うということです。
原因探しやコントロールするのをやめたとき、心は平安になります。

心は外の問題解消が得意

ここまで、心は問題解消に向いてはいない、とお伝えしてきましたが、
その使い方次第では、心を問題解消に役立てることもできます。

心は「外の問題解消」に、活用するのです。

この「外の問題解消」とは、具体的にどのようなものかというと、
例えば、あなたがいる部屋が「寒い」「暑い」と感じたら、どうするでしょうか?

答えは色々あるとは思いますが
まずは、自分のいる部屋を快適な温度にしようと試みるのではないでしょうか。

エアコンのスイッチを押すなど、何かしらの方法で、室温を上げたり下げたりします。
これが、外の問題解消です。

つまり、「どうしたらこの問題が解決するのだろう?」と、外側に解決策を求めることです。
あなたの「心」にアプローチするのではなく、あなたの「行動」にアプローチすること、とも言えます。

仮に、部屋が「寒い」と感じたことを心で問題解消しようとするならば、

なぜ、私は「寒い」と感じてしまうのだろう?
「寒いと感じてしまう、自分の心を何とかしなくては!!」
となりますが、おそらくあなたは、そうはしないでしょう。
この問題に関しては、あなたは内面にアプローチしても悩むだけで解決しないことを無意識に解っているからです。

あなたの心は、「寒い」と感じている。ただ、それだけです。
心をどうにかしようとしても、寒いものは寒い。
だからこそ、「寒い」という状況を物理的に変えるために、外側からアプローチをします。

では、外の問題解消として、心をどのように活用すれば良いのでしょうか。
それは「どうしたら○○を解決できるだろうか?」と、心に問いをたてることです。
心はその答えを自動的に探します。

どうしたら、この目標を達成できるだろうか?

どうしたら、仕事を成し遂げるだろうか?

そう問いをたてることで、自動的に、問題解決のアイデアについて考えてしまいます。

心は上手く使えば、大きな効果をもたらしてくれます。「怒り」「不安」「怖れ」「心配」を成長の機会に

自分の感情や思考に対して抵抗することをやめ、自分の意志や価値観に基づいて行動してみましょう。
それは、自分の意志や価値観を自覚し、そして主体的に自分の行動を選択し、その結果を引き受けるということです。

「生きがいのある人生」に見られる大きな特徴として
「強いストレスを感じた経験の多い人ほど、人生に大きな意義を感じている」ことがわかっています。

ストレスと生きがいが強く結びついている理由は、自分の役割にしっかりと取り組み、目標に向かって努力すれば
目的意識を持って生きていける一方で、ストレスも避けられないからです。

「怒り」「不安」「怖れ」「心配」は不快な感情かもしれませんが
あなたの人生に「生きがい」を与えるものでもあります。

あなたの人生に「怒り」「不安」「怖れ」「心配」は、あっていいのです。

私たちは、思考・心をコントロールできませんが
「何を学んでいるのか?」「あるべき姿は何か?」と問いをたてると、心はその「答え」を自動的に探します。
答えが出るように心を上手く使えば、大きな効果をもたらしてくれます。

つまり、あなたが心にどのような問いかけをするか次第で、あなたは豊かで満ち足りた
意味ある人生を創造できるのです。

まとめ

「怒り」「不安」「怖れ」「心配」。
これらの感情が起きたときは、回避しようとするのではなく、第三者として心の動き眺め、自分自身と向き合いましょう。

私たちは不快な感情をもたらす出来事やストレスから、多くを学ぶことができます。
試練やストレスが自分を成長させてくれると信じ
「何を学んでいるのか?」と自分に問いかけることで、あなたが取るべき行動が自ずと見えてきます。

心は「空想」と「現実」の区別ができません。
「あるべき姿は何か?」と自身に問いかけるときは、成功している姿や、良いビジョンを描きましょう。

自分の行動から満足と幸福を引き出したとき、あなたは強さ、勇気、自信を身につけることができます。
意志や価値観に基づいて行動することで、人生はより豊かで充実したものになるでしょう。

ぜひ、「心の法則」を活用してみてください。

<参考文献>

島宗 理(2019年)「応用行動分析学―ヒューマンサービスを改善する行動科学」

小野 浩一(2016年)「行動の基礎―豊かな人間理解のために」

杉山 尚子、島宗 理、佐藤 方哉、リチャード・W・マロット、マリア・E・マロット(1998年)「行動分析学入門」

B・F・スキナー(2003年)「科学と人間行動」

ジョン・O・クーパー、ティモシー・E・ヘロン、ウイリアム・L・ヒューワード(2013年)「応用行動分析学」

日本行動分析学会(2019年)「行動分析学事典」

ジョセフ・オコナー、アンドレア・ラゲス(2012年)「コーチングのすべて」

ケリー・マクゴニガル(2015年)「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」

ノーマン・ドイジ(2016年)「脳はいかに治癒をもたらすか」

P・F・ドラッカー(2000年)「プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか」

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