会えない人へおくる言葉
投稿日:2025年4月9日 / 最終更新日:2025年4月9日
2年ぶりに夢で出会ったとき、
母は少し怒った顔をしていた。
「どうしたの?」と尋ねたら、
「母ちゃんだけ、そこにいなくて怒ってるんだ…」
そうか。
親父、
家内、
子どもたち、
パートさんたちと仕事をしているのを、
いつも眺めているんだ。
「ところで、おふくろ、オシャレな髪型だね…」
母は、何も言わなかった。
だから、強く抱きしめた。
そう言えば、母は自由にお金を使えなかった。
お金はあったのに…
父が無駄遣いが嫌いで、
母は欲しいものを我慢していた。
父は外食が嫌いだった。
母は365日、父と家族の食事を準備した。
母は、化粧品を買うこともなかった。
母の化粧品は、ニベアクリーム。
母は、美容室にも自由に行けなかった。
そのときに分かった。
母はそっちの世界に行ってから、
自分の好きな髪型にしたんだ。
大きなカールがある髪型。
夕焼けのような美しい赤色にも染めた。
母が生前にやりたかったことなんだろう。
おふくろ!
親父は毎日、お袋のお墓に話しかけているけれど、
どんな会話をしているんだい?
あの頃は、毎日ケンカしていたけれど、
今はねぎらい合っているのかい?
母が亡くなって2年が過ぎた。
もうすぐ、88歳の誕生日だね。
鮨でも食うか?
見えない命となっても、
いつも応援してくれてありがとう。
今日は工場でチョコレートを作ってるよ。
パートさんたちと、
母の話をしながら…
出来上がったチョコレートは、
仏壇に供えるよ。
食べ過ぎないでね。
もし会えたら、
言葉にならないだろう。
ただ、手を握り合うだけになるかもしれない。
見えない命となって、
会える日を楽しみにしてるよ。
ただ、今はやり残していることがあるんだ。
魂を込めた仕事をやり続けたいんだ。
だから、もうしばらく待っていてくれ…
母から見えているように、
俺、頑張っているだろ?
65点くらいは取れてるだろ。
これからも平均点くらいで生きていくよ。