高橋 真弓
社会保険労務士
経営者
ひとりでも多くの人に笑顔になってもらえたら
高橋さんのお仕事について教えてください。
社会保険労務士といって、企業の人事総務、たとえば就業規則の作成や人事評価制度の導入、給与計算業務、労働保険や社会保険手続きの代行など、人事、労務管理面のサポートをする仕事をしています。
平成15年に社会保険労務士の資格を取得して以来、ずっと人事総務の仕事をしているので、8年になります。
トレーナー協会で学び始めたのは2年前(2009年)の夏でした。
コミュニケーションを学ぶきっかけは何だったのでしょうか。
社会保険労務士をしていると、人事担当の方から、心の問題、鬱、休職などについて話されることがとても多くなりました。
企業側も、社会保険料の負担や休職期間の問題もあり、鬱で休職している人にどう対応していいのか迷っています。
成果主義のなか、グループで成果を出すより、自分個人の結果を出さないと生き残れない。
人事考課制度が日本に導入されることによって、自分と周りを比べたり、いい評価をもらうために自分の利益になることは人に話さないようにしたり。
結果、協力し合うという意識が薄れてきているところがあります。
しかも、景気の悪化で人手が減り、ひとりのひとりの仕事量が増え、仕事を抱えてしまい、周りに相談できず、自分を追い込んでしまう。
あるとき急に何も手につかなくなって、気がついたら鬱に、ということもあります。
最近ようやく国が介入して、メンタルケアの大切さが認識されるようになりました。
カウンセリングも、気軽に受けたい人が増えてきています。
自分にも、何か役に立てることはないかと考え、産業カウンセラーの資格を取得しました。
そして学んだ知識を活かし、社労士の仕事のなかで、クライアントさんから相談を受けたときに、自分の学んだことをお伝えしてきました。
ただ、産業カウンセラーの勉強だけでは、今の問題は解決できない気がしたんです。 メンタル面コミュニケーション面から鬱を未然に防ぐ方法はないかと考え始めたときに、コミュニケーションに出会いました。
そういう背景があったわけですね。
しかも、産業カウンセラーとして学んでいる中で自分がどんどんわからなくなってきたんです。
私は兄弟が多くて、小さいときから比べられて育ちました。
それで、「いい子でいよう」と。
明るくて誰とでも仲良くできる。
周りに認められたいために、そういう自分を作ってきてしまっていたのです。
でも、自分が好きになれない。
いろんな資格をとったのも、自分に自信をつけるため。
でも、答えがずっと見えなくて。
だから、ありのままの自分でいいんだよと言われたときに、「ありのままの自分って何だろう」って迷ってしまったんです。
心理学理論の交流分析に、人生脚本という考え方があります。
小さいときに人生脚本を作ってしまい、人生脚本のとおりに生きてしまうという考え方です。
私は、「人に認められたくて、自分の価値を安売りしてしまう」
そんな人生脚本を持っていることに気づいたんです。
そして、「自分を変えたい」という思いが強くなったんです。
実際にコミュニケーション心理学を受講していかがでしたか。
最初は半信半疑でした。
コミュニケーションスキルで変われるといっても、何十年も自分のなかにある否定的な考え方を変えるのは無理じゃないかと思っていました。
でも、上級コースで学んだコアステートのワークで、「あるがままの自分」にストンと落ちたんです。
生まれる前の自分、とでもいうのでしょうか。
心がすごく解放されて、楽になりました、過去に縛られるのではなく、今を生きること。
「これでいいんだ」と、心から素直に思えたんです。
また、コースでタイムラインのワークをやったときも、自分の子供時代の、グレーだった悲しい自分が笑顔になったんです。
いつも、子供時代の母親との関係がひっかかっていて、自分が否定されている、愛されていない、と感じていました。
そんな小さいときの自分の記憶が、嘘みたいに変えられたんです。
今、自分のなかに、すごく満たされた子供がいます。
その幸せそうに笑う表情を見て、今の自分が、幸せに満たされ、周りの人々の愛に支えられている、
と実感できています。
非常に深い体験だったんですね。
そうですね。
その体験によって、子供との関わり方も変わりました。
子供と話をしていると、「なんか、ママに責められている気がする」って言われたことがありました。
私はそんなつもり全くなかったのですが。
私の母親は「こうすべき」という信念の強い人でしたし、私も同じ傾向にありました。
私が「いい子」で育ってきたから、子供も「いい子」に育てようと思っていたんです。
「こういう子がいい子なんだ」という自分の価値観を、子供に押しつけていたかもしれません。
だから、子供にも、無意識に否定的な態度で接していたのかもしれません。
だから、「責められている気がする」と言われた時、「子供を変えるんじゃなくて、自分を変えなきゃいけないんだ」って思ったんです。
そして、子供がいろいろ話してくれたとき、「そんな気持ちを話してくれてありがとう」と私が言えた瞬間、子供の顔色がぱっと明るく変わりました。
人事のご相談の時など、自分の枠の中で判断するのではなく、出来事をニュートラルに受け止めて、自分のほうを変えていく大切さを実感しました。
コミュニケーション心理学を学んでからは、感情に振り回されなくなり、だんだん安定してきています。
ありのままに受け止められるのですね。
もちろん、感情の波にぶつかってしまうこともあります。 でも、以前に比べれば、「これでいいんだ」と受け止められる自分がいます。
ちょうど上級コースを受講中に、大震災がありました。 子供がひとりで家にいたのですが連絡がとれず、私は心配で、慌てて職場を出ました。
職場の外に出ると、全然知らない人がパニックになっていて、恐怖のあまり私の手を握ってくるのです。
私は冷静に「大丈夫ですよ」という感じで、しばらく手を握り返してあげました。
そして、急いで帰ってくると、マンションで知人にあったんですが、「どうしてそんなに落ち着いていられるの?」って。
自分では落ち着いている感じではなかったのですが、慌てている自分のほかに、とても落ち着いている自分もいました。
これもコミュニケーション心理学で学んだ効果だったのかな、と思います。
最後に、高橋さんの夢を教えてください。
社会保険労務士として独立するのですが、そのなかで、コミュニケーション心理学を人事の教育や研修の分野に取り入れていきたいと思っています。
現在、マナー研修よりも、コミュニケーション能力研修が増加傾向にあります。
職場は人生の大半を占める場所です。
仕事に誇りを持って自分自身が輝いていけるような環境作りが必要だと思うのです。
厳しい就職環境の中、たくさんの方々が苦しんでいます。
何度も就職試験を落とされると自分を否定されたように思えてくるのです。
新しい人生のスタートを切るときに、自分に自信をもって「今の仕事でよかった」と思えるような仕組みづくりをしていきたいと思います。
今の子供たちは、自分に自信を持てる子が少ないように感じます。
人と比べてしまったり、自分を好きになれなかったり。
でも、どんな自分も認められること、どんな自分も好きになれる事が、教育で大事になってくると思っています。
大震災でも痛感したのですが、ネットの世界ではなく、実際の人と人との絆や、心の通い合えるコミュニティをつくっていけたら。
そして、ひとりでも多くの人に笑顔になってもらえたら。
そんなサポートをしていきたいと思っています。
プロフィール
高橋 真弓
社会保険労務士 産業カウンセラー カラーセラピスト
人と人との繋がりを大切に、心の専門家としての立場から人事・労務管理のサポート業務を行なう。
コミュニケーション心理学を通して一人でも多くの人が自分らしく輝いて、夢や目標を実現できるお手伝いが出来るようサポートを行っている。